なんとかならないか年頭の辞

年明け早々の新聞には、企業トップの年頭の辞が並びます。これは企業広報の年中行事の一つで、暮れから原稿を用意して、新年最初の営業日にリリースします。近頃は年内に原稿をくれと担当記者から要請されることも多くなりました。なんだか年賀状のようです。
この年頭の辞って、いったい誰が読むんでしょうね。
社員:意欲のある社員はきっと目を通すでしょう。でも、これって社内にも流れる社長訓辞のサマリーですよ。新聞で読む必要は必ずしもありません。
取引先企業や銀行:この人たちは読みます。年始の挨拶に行ったとき、「社長、さすがにいいことを言わはりますなあ」なんて、ゴマをするネタにうってつけです。
競合会社:一応目を通すでしょう。おっ、あそこは今年やる気だなあ、なんてことがわかるかもしれません。
そのほかに、どんな方々が読むのか想像がつきませんが、各社のトップの言葉を読んでいると、毎年決まって登場する常套句に気づきます。「今年は厳しい」、「変化に対応」、「発想の転換」、この3つです。
どうも日本のトップは、キビしいキビしいと言っていないと気が安まらないらしい。後年振り返ってみれば、厳しくなかった年もあるはずで、そんな年に「キビしい」と発言したトップは現状認識が甘かったと批判されるべきでしょう。ぜひそのような覚悟の上で「キビしい」と言っていただきたい。
「変化に対応しなくてはいけない」というフレーズは、10年ほど前からしばしば耳にするようになりました。これには、小泉元首相が所信表明演説で引用した「この世に生き残る生き物は、力の強いものでも頭のいいものでもない。それは、変化に対応できる生き物だ」という『ダーウィンの言葉』が付け加えられることが多いようです。ネットサイトによると『種の起源』にはこんな記述はないそうですが、なかなかよくできた警句ではあります。
「発想の転換」も聞き飽きました。毎年毎年発想の転換をしていたら、そのうち元の発想に戻ってしまわないかと心配になってきます。「発想の転換」と叫ぶトップの発想の方を転換した方がずっと御利益がありそうです。
すべてとは申しませんが、陳腐でおざなりな年頭の辞が多くて、新聞の読者としては面白くありません。そんなことは十分承知しております、と各社の広報担当者の方々はおっしゃるでしょう。切れ味鋭い年頭の辞を発表したいと思っても、トップ自身がそのように考えていなかったらどうにもなりません。広報各位のご苦労が忍ばれます。〈kimi〉

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