接近遭遇

世の中には自分とそっくりな人が三人いるといわれます。

私がその一人に初めて遭遇したのはまだ学生時代、テニスの夏合宿のことでした。

中軽井沢にある大きな民宿は大勢の学生でにぎわっています。合宿も終わりに近いある日の夕食後のこと。電話をするという友人に付き合って、私は廊下の公衆電話の横に座っていました。すると、見知らぬ男子学生が通りがかりに、「なんでこんなところに座ってるんだよ。いかないのか?」と話しかけてきました。

「・・・??」

周りを見回しても背中を向けて電話をしている友人しかおらず、どうも私に話しかけているらしいのです。なんて答えてよいか分からず座ったままでいると、「早く来いよ」と言って、行ってしまいました。

すると今度は二人連れの学生が通りかかり、「あれ、おい、なにやってんだよ~。早く行こうぜ。花火はじまるぞ~。」と私の腕をぐいぐい引っ張ります。

(えっ、えっえ~・・・!ち、ちがう)と思っても、あまりのでき事に声もでません。やっとのことで腕を振り解くと、「な、なんだよ~。早く来いよ~。さき行ってるぞ~。」とちょっと不満げな顔をしながら立ち去りました。

この間、三人が至近距離にも関わらず、完璧に私を彼らの友人と間違えていたということです。

残念ながら、その合宿中、そこに居たはずの”私と瓜二つの誰か”とはついに出会うことはありませんでした。

それから二年後、ジャージ姿で自宅近くの駅前を自転車で通りかかったときのことです。前方から小学5~6年生の生徒6,7人が歩いてきます。その中の一人が突然「あ、〇〇先生だ!」というと、他の子供たちも「あ、本当だ。〇〇せんせ~」「〇〇せんせ~」と口々に叫びながらこちらに走ってきました。 私は急いで眼だけを動かして辺りの様子をうかがいましたが、やはり”先生”らしき人は見当たりません。

(えっ!うそ~。もしかして~?!)

笑って応えようか、知らぬ振りをして通り過ぎるか、、、と一瞬迷い、なんとなく中途半端に微笑みながら、あっけにとられている子供たちの間をすり抜けていきました。

「え!〇〇先生じゃないの?」「良く似てたね~」「本当だね~」と驚く子供たちの声を背に聞くことになったことは言うまでもありません。

これで二人目!

さらにその二年後、ランチタイムをとうに過ぎて閑散とした丸の内のオフィスビルの地下街を私は歩いていました。すると、女性が「あ、〇〇ちゃ~ん」と懐かしそうに手を振りながら小走りに近づいてきます。

三度目ともなると、(そら来た!)と勘が働くというものです。もちろん、その女性も私が通り過ぎるまで人違いに気付きませんでした。

その後、ぱったりと人違いされることはなくなりましたので、やはり世の中には自分に似たひとが三人いるというのは本当なのかもしれません。

でも、もしかして、、、もし、私にそっくりな誰かが私と同じ人生の軌跡をたどっていたとしたらどうでしょう?

三度目の出会いのあと、その彼女は遠くに嫁ぎ、私の人生との接点がなくなったのかも知れないのです。

あり得なくはない、とは思いませんか?

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

次のHTML タグと属性が使えます: <a href="" title=""> <abbr title=""> <acronym title=""> <b> <blockquote cite=""> <cite> <code> <del datetime=""> <em> <i> <q cite=""> <strike> <strong> <img localsrc="" alt="">