2017年12月18日

(235)違和感がある海外渡航移植支援

 厚生労働省が海外での臓器移植手術に保険給付を認めると決めたとのニュースに正直びっくりしました。現役時代もそうでしたが、OBになってなおさら、お役人方との接触の機会がありません。格好良く、その裏を解説するなんてことはできないですが、果して賢明な政策といえるのかどうか、疑いと同時に違和感も感じます。
 報道によると、海外でけがや病気をして治療を受けた場合、日本の保険から払戻しが受けられる「海外療養制度」の拡大とのことで、厚労省は年内にも健保組合に通告するようです。関係機関で議論が進んでいたのにメディアが気づかなかったためか、あまりにも突然で性急な動きに見えます。さては、有力政治家の孫や曾孫が心臓異常で生まれたかな、と考えたくもなります。
 どの臓器であれ、日本の移植ネットワークに登録ずみで、しかも移植が緊急に必要になった患者が対象とされますが、子どもの心臓移植が最大のねらいでしょう。とはいえ、実際に日本人の子どもに移植をしてくれる米国での経費は年々高くなっています。かつては両親が周囲から寄附金を集めるのも数千万円でしたが、いまは渡航費、滞在費を合わせて3億円募金が普通になっています。厚労省は心臓移植の場合、保険から1000万円ほどを給付する方針といわれています。
違和感があるのはまず、3億円分の1000万円の意義です。少なすぎる感じがしますが、これを端著にどんどん増額、という方向も、高額医薬品、高額治療が増えている現状から保険財政が不安です。そもそも高額になったのは、他国の臓器をお金で買う行為への批判から2008年に国際移植学会が移植は自国ですべきとの「イスタンブール宣言」を発表してからです。外国人への移植は限られる率に減り、その分、高騰しました。さらに米国では私的なあっせん機関が活動、経費の多くが病院でなくあっせん機関に流れているとの指摘もあります。
 学会の宣言後も日本の臓器提供は文明国では最低で、米国の40分の1、韓国の14分の1です。厚労省の対応は世界から開き直り政策と見られかねません。
 脳死判定や臓器移植は人手や場所を要し、保険では赤字になり、病院はあまりやりたくありません。国民への啓発活動もおざなりです。iPS 細胞で臓器ができるまでにはまだ何十年もかかります。厚労省は本当は日本の臓器移植の充実にもっとお金をつぎ込むべきではないのでしょうか。