2018年2月13日

(242)医療費の低コスト改革案とは

 医療制度問題で最近目立つテーマは「保険医療財政をどう持たせていくか」です。多くのがんへの効果が期待されている免疫剤オプジーボが超高価格であることから、薬や医療行為の効果と価格に関心が向かってきているのはとてもいいことです。日本の制度は昔から効果があろうとなかろうと、患者が治ろうと死のうと同じ料金、というのに私はずっと疑問を感じてきました。
 先日、茨城県立中央病院名誉院長・永井秀雄先生の講演を聞く機会がありました。自治医大外科の教授を経て経営難の県立病院の院長になりました。経営などはあまり考えたことのない先生は専門の「がん」に加え、当時の病院が熱心でなかった「救急」を柱とし、医療の質向上を強調しました。医師が楽しく働けるよう時間外手当ても充実しました。減っていた医師、看護師も逆に増やしました。有力病院が断ったがんなどを患う精神病患者も受け入れました。就任翌年から病院収益も上がり、危機は解消したそうです。
 こうした経験から永井先生は「人口減・高齢化は危機」といった医療分野の議論に疑問を持つようになりました。「第三次大戦もペストもスペイン風邪もなく、だれもが長寿の時代、を祝福すべき」との指摘は、考えてみるとその通りです。
 今回の講演のテーマは「低コストの医療改革」でした。具体的には国民への医療教育を充実し、国民が健康管理や医療福祉に関心を持ち、医療者への協力や正しい評価ができるようになることです。生活習慣に留意し、病気予防に努めます。保育園・幼稚園から義務教育、大学、社会人・高齢者までの生涯教育は大きなコストがかかりません。医療を医療者任せでなく、国民が主体的に参加する必要があると、永井先生は「参療」「参療権」という言葉を作りました。茨城県のがん条例にこの言葉は採用されているそうです。
 永井先生は腹壁をつり上げて行う日本独特の腹腔鏡手術法を初めて実施された先生で、1990年代に何度か取材し、紹介しました。炭酸ガスでお腹をふくらませないので、患者にはより安全な方法です。今回、まったく別な分野での先生の活躍を知り、とてもうれしく思いました。