2018年3月19日

(247)かけ声だけのイノベーション

 当初は聞き慣れない言葉と思っても、何年もたつと何となくわかった様な気持ちになってくるものです。たとえば、イノベーション。革新技術、変革、技術革命などと訳されます。安倍首相の好きな言葉でもあり、2007年には2025年までを視野に入れた長期的戦略指針「イノベーション25」が閣議決定されています。
 政府の「イノベーション会議」は昨年12月末、「総合イノベーション戦略」を今年夏に策定することを決めました。国策として研究予算を増やし、イノベーション創出に力を入れるというわけです。日本がこれまで同様に発展し続けるには、革新的な技術の開発が不可欠なのは当然です。
 ところで3月の初め、東京で未来健康共生社会研究会 (主催・渥美和彦記念財団)のシンポジウムがありました。そのなかで、本澤実 (ほんざわ・みのる) 埼玉学園大学大学院客員教授の講演が最も印象的でした。
 データでは日本はイノベーション創出に逆行しています。2000年以降の科学技術予算の伸びは主要国では最も低く、世界のトップ論文のシェア率は低下、中国、米国との差がどんどん広がっています。また、日本は既存の延長線上の研究が多く、新しい研究が少ないことも領域数統計でわかります。「失う側」である大企業中心の日本社会からはイノベーションは生まれにくい、との指摘でした。
 そういえば国立大学法人の基礎研究費が減っている、国の研究費補助も基礎よりはすぐ結果の出る底の浅い研究、実用重視になっている、との研究者の指摘を毎年のように耳にします。近年、日本のノーベル賞が多いのは、学問的、人間的興味からの研究を排除しなかった30年、40年前の研究費配分の成果で、このままでは尻すぼみになるとも予測されています。
 政府の方向を決める「○○会議」にはたいていは経団連の役員を始め、各界を代表する大企業の役員が参加しています。大企業が牛耳る業界団体が行政を補完し、大学の研究者もそうした企業と親しくしています。森友学園問題で明るみに出たように、政治家は地方の小企業に忖度したいのかも知れませんが、政府全体としては大企業寄りは明らかです。イノベーションはかけ声だけで、日本の劣化は避けられないのかも知れません。