2018年5月7日

(254)内部告発が嫌いな日本ですが

 業界の不正を告発した人と家族のその後を扱ったNHKテレビの特集が心に残っています。16年も前の雪印食品の牛肉偽装事件です。輸入牛肉を国内産と偽っていることを告発した主人公の男性は経済的に困り、娘さんは自殺を図りました。主人公は今は寝たきりの娘の介護が主たる仕事です。後を継いだ息子も業界と折り合えず、事業は行き詰まりかけている、といったような筋でした。同情に耐えません。
 その1週間ほど前、『毎日新聞』のスクープ (4月26日付け) がありました。2016年1月に従業員の通報から発覚した沖縄の基地建設工事の過大請求事件は、電話を受けた防衛省沖縄防衛局が内容を文書にし、元請けの大成建設に渡しました。通報には個人的な情報も含まれ、過大請求会社は従業員を県外に異動したというものです。
 同じような話をもう何度聞いたことでしょうか。
 日本は仲間、業界グル社会です。子どものころからの横並び教育が生きています。日本では他の業界への不正行為や損害を与えることよりも、和を乱すことが問題だと考えられているとしか思えません。だから内部告発は業界に対する最大の重罪なのでしょう。業界ぐるみでいじめます。
 そのうえ、官庁は業界を行政の補佐役に使っており、業界ぐるみは政府の意向にも沿っています。雪印食品の前に北海道でも牛肉偽装事件がありました。メディアで報じられるまで、農林水産省や北海道庁は内部告発を1年以上も放置していました。よくて無視、さもなくば企業に告発者を知らせるか、です。2006年から公益通報者保護法が施行されていますが、12年たっても変わったとの感じがありません。首切り、左遷され後悔している告発者は表に出ている何十倍、何百倍もいるはずです。
 記者時代、内部告発からのスクープは10回弱ありました。ご自分で明かされたような方が2、3人ありましたが、残りは不明のままでした。メディアが受け皿になってきちんと指摘するのがいまのところ、最善策と思っています。