2018年5月21日

(256)ips細胞シートへの大きな期待

 ips細胞から作る心臓筋肉シートの臨床研究が 5月16日の厚生労働省部会で了承され、年度内にも始まるとのニュースがありました。目の病気である加齢黄斑変性に次ぐものでips細胞の再生医療の将来を占う重要な研究と見られています。
 大阪大の澤芳樹教授 (心臓血管外科) グループは心不全患者の足の筋肉細胞から作るハートシートを研究、市販にまでこぎつけた実績があります。心筋シートはより重症患者に有効と見られ、日本では心臓移植の代替治療としての期待が高まっています。
 山中伸弥・京都大教授が開発、ノーベル賞を受けただけにips細胞絡みとなると、マスコミの扱いも大きくなります。しかし、問題がないわけではありません。がん細胞の出現がいつも指摘されますが、私は臨床的な最大の課題はコストだと思います。加齢黄斑変性治療では億円単位の費用がかかり、必要細胞数が格段に多い心不全はさらにコスト高になりそうです。その対策として山中さんは本人のips細胞でなく、免疫の近いグループごとに代表的な細胞から作った組織の応用をめざしています。澤さんが使うのもこれですが、はたしていくらぐらいの価格になるのでしょうか。
 重症心不全の治療といえば世界的には心臓移植です。しかし、日本は世界で最も心臓移植が少ない国です。日本人が米国で移植してもらうと億円単位ですが、欧米諸国では何十分の1か、ですから、コストが高いままでは、ips細胞の心筋ハートは日本以外の国ではまず使われません。しかし、安価な細胞増殖法が開発されれば、ips細胞による再生医療があらゆる臓器移植を駆逐する可能性は残ります。
 一方、格段に安い、しかも日本生まれの心不全治療法があります。鹿児島大教授(循環器科)だった鄭忠和先生が開発した、低温サウナで体を温める「和温療法」です。「心臓移植でしか治りませんよ」といわれた患者が改善して何年も長生きしています。臨床試験が済み、保険適用が目前といわれながら足踏みしているのが不思議ですし、とても残念です。