2018年8月6日

(267)精神科の身体拘束の不思議

 患者の手足をしばって動けなくする身体拘束はひところ、全国的に日常的に行われていました。八王子市にあった老人病院・上川病院が中心となり、医療機関での身体拘束がかなり改善されてきたのは有名です。ところが、精神病院ではまだまだ当たり前のようです。先月、精神病院での身体拘束を主題にしたシンポジウムが東京で開かれました。
 長谷川利夫・杏林大学保健学部教授らの報告に驚かされました。長谷川さんは作業療法士で、精神病院で身体拘束をされていたニュージーランドの青年が2017年 5月に死亡した事件をきっかけに「精神科医療の身体拘束を考える会」を立ち上げた方です。精神保健福祉法では自殺、自傷行為の切迫などごく限られた条件下でしか認められていない身体拘束が、実際には多くの精神病院で安易に行われています。ニュージーランド青年も看護師と穏やかに会話した様子が看護記録からはうかがえるのに、です。
 日本の医療は患者中心になっていないのが現実です。とはいえ、いつも思うのは医療現場で働く看護師さんのことです。職員の半分以上を占める看護師さんは病院の最大勢力です。患者さんに接する時間が医師の何十倍も多い看護師さんは、患者さんに一番近い存在です。ふだんは患者さんが痛い、苦しいといえばちゃんと話を聞き、薬を考えてくれて、最後は担当医に連絡してくれます。黙っていても、様子から病状の変化を察してもくれます。
 身体拘束はとてもつらいようで、誰でも嫌がります。法律では例外的な措置、となっています。それなのにどうして看護師さんは急に患者さんから遠ざかって、身体拘束をしたり、黙認したりするのでしょうか。間違っていても医師の指示は絶対的、だからでしょうか。不興をかって病院をやめさせられたら困るからでしょうか。まさか、親切さは職業的なポーズで、実は患者さんを見下していて、縛ったほうが手がかからない、が本心ということはないと思うのですが。
 医療界は何年取材してもよくわからないところがあります。