2018年9月25日

(273)病院別のがん患者生存率から浮かぶのは

 がん患者さんの生存率データが、2週間前の9月12日に公表されました。2008年、09年に全国のがん拠点病院など 251病院で治療された約50万人の5年生存率を集計した画期的なデータです。卵巣がん患者の4年生存率は代表的な21病院で43%から10%未満もの大差があると初めて公表されたのは1993年でした。論文では仮名の病院名を明らかにしたいと何度も挑戦しましたが、結局は秘密のベールのまま終わったのを思い出します。医療統計も改善されつつあると実感しました。調査をまとめた国立がん研究センターがん対策情報センター、報告した個々の病院のみなさんの努力に敬意を表します。
 早速、2つほどの週刊誌からコメントを求められました。載ったかどうかわからないのは、私の感想が率直すぎて、記者の注文通りでなかったのかもしれません。週刊誌はランキングが大好きです。私は必ずしも数字は鵜呑みできないことを強調しました。
 がん患者だけしか診ない専門病院は他の重い病気を持った患者を断ることが多く、受け入れる地方の中核病院より生存率は高目に出ます。また、数字はあくまで10年前で、外科手術の腕は執刀医が転任すれば一変します。標準治療だけしかしない病院と患者に合わせた治療を工夫してくれるかどうかで 3、4期の成績も差が出てきますし、と。
 こうしたデータが公表され、病院間で比較されるのは病院や医師には気が重いことかも知れません。でも、他の病院のデータを知ることで、改善すべき目標が見えますし、その病院の患者にとっても参考になります。技術的な問題の有無、地域的な特徴か、転院の必要性があるかどうかも考える必要がありそうです。
 データでは、がん全体の5年生存率は65.8%でした。対象になった11のがんで5年生存率が極端に悪いのは4つで、医療界として取り組む必要がありそうです。すい臓10.0%・肝臓39.6%・肺40.0%・食道43.7%の順でした。すい臓は7割が3、4期で、発見遅れの解消、肺は小細胞がんの治療が課題です。